代表者はTGF-βの癌での作用を理解するために、EMT(epithelial-mesenchymal transition;上皮間葉転換)に着目して研究を進めている。TGF-βがEMTを誘導するには、rasや増殖因子などのシグナルと協調する必要があることを、Snailの発現を指標に明らかにした。この結果をNMuMG細胞に応用したところ、FGF-2により相乗的にEMTが強められた。その分子機構を解析した結果、まず、TGF-βによりFGF受容体のアイソフォームスイッチが誘導され、上皮系のIIIb型から間葉系のIIIc型に変換する。IIIc型のリガンドであるFGF-2によりErkが活性化されTGF-β誘導性EMTを増強する。このアイソフォームスイッチには選択的スプライシング因子ESRPが必須であることがわかった。またTGF-βによって発現誘導されたδEF1転写因子が、筋線維芽細胞分化ならびに、ESRPの発現調節に非常に重要であることを明らかとした。したがって、δEF1転写因子が、SMAやカルポニン陽性の筋線維芽細胞へ分化するEMyoT(epithelial-myofibroblastic transition)に必須であることと、また、ESRPがEMT誘導に非常に重要であることを見出し、論文に発表している。
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