研究概要 |
前年度に確立した実験的腫瘍に対するおとり遺伝子導入条件を応用し,抗腫瘍効果の検証をするため,ヌードマウスの舌に移植して作成した腫瘍組織におとり遺伝子を導入し,以下の事項を検索した. 1) 実験的腫瘍において活性化している転写因子の検索と,おとり遺伝子導入による標的転写因子の抑制効果の検討 現在まで申請者は培養口腔扁平上皮癌細胞の血管新生機構を制御している転写因子として,Sp1やHIF-1の重要性を報告してきた.本年度は動物モデルにおける実験的腫瘍においても,Sp1が強く活性化していることを解明した.また,Sp1を標的としたおとり遺伝子を遺伝子導入し,Sp1の転写活性の抑制効果についてバンドシフトアッセイにより検証すると,7日間にわたりSp1の活性化が阻害されていることを解明した. 2) 実験的腫瘍において,おとり遺伝子導入により抑制される血管新生因子群の検索 現在までの研究成果により,Sp1を標的としたおとり遺伝子は,培養口腔扁平上皮癌細胞においてVEGF, TGF-β1, PDGF, TFなどの強力な血管新生因子群を,同時にかつ効果的に抑制できることを検証している.そこで,本年度は動物量モデルに作成した実験的腫瘍を用いて,おとり遺伝子の導入が腫瘍の血管新生を抑制するのか,あるいは腫瘍増殖も抑制できるのか検証した.その結果,Sp1に対するおとり遺伝子の導入は実験的腫瘍の増殖を40%まで抑制し,腫瘍組織内のVEGF, TGF-β1, PDGF, TFなどの血管新生因子群の発現が強く阻害されていることを解明した.
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