研究課題
【目的】癌組織における低酸素環境は癌細胞の抗癌剤に対する感受性を低下させるが、それには低酸素誘導因子であるHIF-1αが密接に関与している。一方、一酸化窒素(NO)は腫瘍内酸素分圧の上昇作用やHIF-1αの発現抑制作用を有していることが報告されている。そこで、口腔扁平上皮癌において抗癌剤とNOとを併用することにより抗癌剤の抗腫瘍効果が増強されるか否かを検討した。【材料および方法】定常酸素分圧(20%O_2)および低酸素分圧(1%O_2)下で培養した口腔扁平上皮癌細胞株(OSC-4)をNOドナー(NOC18、SNAP)で処理し、HIF-1αおよびその標的遺伝子産物(VEGF、P-gp、GLUT-1、HO-1)の発現、細胞増殖、アポトーシス誘導に及ぼす影響を検討した。さらに、BALB/cマウスの背部皮下にOSC-4を移植して腫瘍を形成させた後、皮下に埋め込んだアルゼット浸透圧ポンプを用いてニトログリセリン(NTG)を持続投与するとともに5-FUを腹腔内投与し、経時的に腫瘍径を計測し、その後、腫瘍組織におけるHIF-1αおよびその標的遺伝子産物の発現を免疫組織化学的に検討した。【結果】正常酸素および低酸素分圧下いずれの条件下においても、5-FUによるOSC-4の増殖抑制およびアポトーシス誘導作用はSNAPあるいはNOC18の添加により濃度依存的に増強された。マウス背部皮下に形成された腫瘍の増殖は、5-FUあるいはNTG単剤投与でも有意に抑制されたが、両者の併用により最も強く抑制された。【考察】以上より、口腔扁平上皮癌において、NOは5-FUの抗腫瘍効果を増強させることが示唆された。
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Recent Advances and Research Updates 11
ページ: 121-136
日本口腔外科学会雑誌 55巻
ページ: 189-193
ページ: 553-561
http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_dntst/index.htm