研究課題
脳機能は、脳に内在する分子基盤に立脚して営まれている。したがって、脳内のシナプス、神経細胞ならびにグリア細胞に発現している受容体、もしくはニューロン分布する神経伝達物質の動態を明らかにすることができれば脳の可塑性をも明確に説明できると考えられる。本研究では、歯の欠損が無く歯科的処置を必要としない健常被験者と、歯の欠損を有し可撤性義歯による処置を必要とする被験者を対象とし、口腔内環境の変化が及ぼす脳内受容体への影響をポジトロン断層撮影(PET)による脳内受容体の機能画像から解析することにより、口腔内環境の変化が脳可塑性に及ぼす影響を検索することを目的としている。本年度は、本研究に適合する被験者の選定を試みたが、積極的に協力が得られる者は少なかった。一方、歯の欠損により、口腔感覚の低下や咀嚼障害がしばしば生じることが知られていることから、運動機能のみならず意思決定などの認知機能にも関与する大脳基底核の主要構造である線条体の機能変化を検索することが適当であると考えられた。そこで本年度は、まずラットの線条体におけるドーパミンD2受容体の発現パターンを、このリガンドである[11C]ラクロプライドを用いてPET撮影した。その結果、この薬剤はドーパミン受容体結合の選択性が高く、D2受容体との結合はPET測定時間内に平衡に達し、その後速やかに解離したことから、薬剤分布の時間変化を解析し、結合および解離の速度定数を求める必要があることが分った。次年度は、被験者の獲得と、解析の対象とする脳内受容体ならびに最適な被験課題の決定を目的として、行動学的検索手法を加味し、口腔内環境の変化が短期的な脳内受容体の活動に及ぼす影響の解析を目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
老年精神医学雑誌 21
ページ: 340-345
[食と脳]咀嚼と脳機能の賦活 脳血流の視点から.別冊the Quintessence臨床家のための矯正YEAR BOOK '09症例から学ぶ矯正臨床のクリニカルヒント(伊藤学而, 中島榮一郎, 山本照子, 清水典佳, 大塚祐純編)(クインテッセンス出版)
ページ: 87-90