本研究の目的は、天然歯およびインプラントにかかる咬合力がそれら周囲の骨構造の変化に及ぼす影響と結果を高精度に予測することが可能であるか否かを検索し、可能であればその予測方法を確立することである。平成21年度はラットのインプラント植立・咬合モデルを確立するために、径1.5mm長さ2mmの純チタン製オーダーメイドインプラントを使用し、これに適合するクラウンを用いてインプラントを最長4週間咬合させた。さらにラット上顎臼歯を抜歯後4週間経過し、抜歯窩が治癒した状態の上顎骨標本10個を対象としてマイクロCT撮影を行い、平均的な抜歯後の上顎骨の形態を統計学的手法によって求めた。また、インプラントを埋入するために最も周囲骨の量が確保できる位置を算出した。このCTデータを3次元有限要素法解析ソフトに入力し、インプラントに対して垂直方向に荷重をかけた場合の応力解析を行った。その結果、インプラントの周囲の骨より、上顎骨の基部周囲に応力が集中することが分かった。実際にインプラントを埋入したラットの組織切片を観察したところ、前年度の結果とは異なり、オッセオインテグレーション成立後には、必ずしもインプラント周囲に骨改造が起こらないことが示され、インプラント周囲での骨改造と有限要素法による解析結果との関連性を示すことが可能であることを示している。今後は、各種条件下での有限要素法による解析結果と組織学的所見との関連性をさらに検索する予定である。
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