本研究の目的は、天然歯およびインプラントにかかる咬合力がそれら周囲の骨構造の変化に及ぼす影響と結果を高精度に予測することが可能であるか否かを検索し、可能であればその予測方法を確立することである。平成22年度は前年度のラットのインプラント植立・咬合モデルを改良し、径1.5mm長さ2mmの純チタン製オーダーメイドインプラントにねじ止めできるアバットメントを使用し、これをカンチレバー形態にしてインプラントに過度な咬合力を与えた。その結果、インプラント埋入後4週間でカンチレバー形態のアバットメントを装着したものでは、7日から15日後にインプラントからやや離れた領域に骨吸収が活発に観察され、インプラント表面に成立したオッセオインテグレーションの破壊は限定的であった。一方、過度な咬合力がかからない、円形のアバットメントを装着したものでは、このような変化は観察されなかった。これらの条件でインプラントに咬合力を加えた際の、応力分布を解析するために、標本をマイクロCTにて撮影し、このCTデータを3次元有限要素法解析ソフトに入力して、インプラントに対して斜め45度方向に荷重をかけた場合の応力解析を行った。その結果、応力の集中は従来のデータとは異なる部位に起こる可能性が示唆された。これにより、インプラント周囲での骨改造と有限要素法による解析結果との関連性を示すことの可能性がさらに高まったと考えられる。今後も、各種条件下での有限要素法による解析結果と組織学的所見との関連性をさらに検索する予定である。
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