本研究の目的は、天然歯およびインプラントにかかる咬合力がそれら周囲の骨構造の変化に及ぼす影響と結果を高精度に予測することが可能であるか否かを検索し、可能であればその予測方法を確立することである。平成23年度は径1.5mm長さ2mmの純チタン製オーダーメイドインプラントにねじ止めできるアバットメントを使用し、これをカンチレバー形態にしてインプラントに過度な咬合力を与えた。その結果、インプラント埋入後4週間でカンチレバー形態のアバットメント上に滑沢面が出現し、ラットが主に咬合していると思われるポイントを同定できることが判明した。この条件でインプラントに咬合力を加えた際の、応力分布を解析するために、標本をマイクロCTにて撮影し、このCTデータを3次元有限要素法解析ソフトに入力して、実際に咬合しているポイントにおいてインプラントの軸方向に荷重をかけた場合の応力解析を行った。また、インプラント埋入そのものによるインプラント先端の骨形成やラットの成長による影響を排除するために、これらに関する詳しい分析も行った。一方、CT撮影を行った同じ個体のインプラント周囲組織を組織切片とし、応力分析の結果と比較した。その結果、応力の集中部位には、他部位に比較して骨吸収がより活発に起こる可能性が示唆された。骨形成との関連は明らかではないが、3次元における分析で、咬合力による応力集中部位と、骨吸収との関連が示唆されたことは、有限要素法の生体内骨変化に対する予測効果が大きいことを示唆している。
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