本年度は、検査用グミゼリーを用い、試作した測定装置(セミオートタイプ)の測定精度と、その精度向上のための装置の改良について検討し、さらに多施設において現行のグルコース濃度測定法を用いた疫学調査を実施した。本研究で得られた研究実績の概要は、以下の通りである。 1.色素含有グミゼリーを用いたグルコース濃度測定法の精度に関する検討 長年にわたり実施しているグルコース濃度測定法に対して、今回新たに開発したβ-カロチン含有グミゼリーを適用させ、測定精度について検討を行った結果、グミゼリー表面から溶出するグルコースの濃度とグミゼリー表面積増加量との間に強い相関関係(r=0.952)を呈する一次回帰式が得られ、操作条件を厳守することにより本測定法の良好な精度が示された。 2.グルコース濃度測定法の医療機関等における疫学調査への展開 連携研究者の所属施設において口腔内の環境と咀嚼能力との関連性について検討を行った結果、歯の欠損が生じたとしても、良好な義歯を装着している場合、年齢、性別、歯の欠損数や咬合支持は咀嚼能力に影響を与えないことが判明した。 3.試作した自動測定装置(セミオートタイプ)による色素濃度測定法の精度に関する検討 色素含有グミゼリーを用い、β-カロチンの溶出濃度を測定する自動測定法の精度について検討を行った結果、装置ごとの精度に問題はみられなかったが、複数の装置間で測定値にバラつきが認められた。本自動測定法において、統一した回帰式を得るまでには至らなかったことから、自動測定装置のシステム改良の必要性が示された。 4.試作の咀嚼能力自動測定装置の改良ならびに新たな開発に関する検討 自動測定装置内の水洗部、撹拌・測定部の構造ならびに一連の操作に係る制御機構について検討を行った結果、各操作の自動化によるフルオートタイプ測定装置への改良と、測定環境に影響を受けない測定法の確立の可能性が示唆された。
|