本年度は、咀嚼能力評価法の汎用化を目指し、新たに開発した色素濃度の自動測定装置(フルオートタイプ)と複数の施設における本評価法の有用性について検討を行った。本研究で得られた研究実績の概要は、以下の通りである。 1. 咀嚼能力測定装置の改良に関する検討 自動測定装置(セミオートタイプ)における各装置間の測定精度を改善した。さらに、この装置をグミゼリーの洗浄・撹拌・測定の全工程をすべて制御した自動測定装置に発展させ、操作の効率化を図ると同時にテクニカルエラーの制御可能な自動測定装置(フルオートタイプ)を試作した。 2. 自動測定装置(フルオートタイプ)による色素濃度自動測定法の精度の安定性に関する検討 グミゼリーに含有したβ-カロチン濃度の自動測定法の精度をさらに向上させる目的で、咬断したグミゼリーの洗浄・撹拌・測定など、これまで手動によるすべての操作を一括制御できる装置を開発し、その測定精度について検討を行った。その結果、緑色の波長の発光ダイオードを用いた場合、フォトダイオードにおける電圧(V)と、分割したグミゼリーの表面積増加量(mm^2)との間に、高い決定係数(R^2=0.984)を有する二次回帰式が得られ、良好な測定精度を有し、かつ複数の装置の間にも差がみられない自動測定装置(フルオートタイプ)の有用性が確認された。 3. 咀嚼能力評価法を用いた様々な施設における疫学調査 本研究で開発した色素含有グミゼリーを用い、各連携研究者の施設において、グルコース濃度測定法や色素濃度測定法による機能評価のデータを収集し、口腔内の条件と咀嚼能力との関連について検討を行った結果、歯や口腔の多様な状況に対して、本測定法が実用可能であることが示された。さらに、口腔内の条件の中でも、特に最大咬合力が咀嚼能力に対して強く関連することが示され、歯の欠損部には機能性を備えた補綴装置を装着し、咬合の支えを確立させるという歯科医療の重要性が示唆された。
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