研究概要 |
下顎骨の皮質骨と海綿骨の骨量が減少している骨粗鬆症モデルマウスSAMP6とそのコントロールマウスSAMR1の下顎骨のコラーゲン性状に関与するコラーゲン分子間架橋を比較分析した.SAMP6ではSAMR1に比べ,未熟架橋数と総架橋数が少なく,架橋の成熟度が増大していた.これらの結果から,骨粗鬆症モデルマウスの皮質骨と海綿骨の骨量が減少する下顎骨では,架橋形成に必要なリジルオキシダーゼの遺伝子発現あるいは酵素活性が低く,骨代謝回転が遅く,骨がもろい可能性が示唆された.続いて,ヒトでの下顎骨の表現型(皮質骨量と海綿骨量の関係)の多様性を明らかにするために,2003年7月から2007年4月までに福岡歯科大学医科歯科総合病院でCTによるインプラント術前検査を受けた女性患者の中で,下顎第一大臼歯を有した全患者35名の下顎第一大臼歯部の顎骨の皮質骨と海綿骨の骨量をCT画像から計測した.皮質骨骨量は,50歳未満の患者群と50歳代の患者に比べ,60歳以上の患者群で有意に少なかったが,海綿骨骨量では3群間での相違が認められなかった.また,皮質骨と海綿骨の骨量は,3群あるいは全患者群で相関関係が認められず,患者の皮質骨と海綿骨の骨量関係には患者固有の個体差が存在する可能性が示唆された.この患者のデータから,顎骨の表現型を分析していく上で皮質骨と海綿骨を個別に分析する必要性が推察され,モデルマウスのデータからこれらの分析のためのコラーゲン生化学分析の有用性が示唆された.
|