研究概要 |
歯槽骨の表現型(骨量や形態)とその加齢変化(特に,抜歯後あるいはインプラント治療後)は患者間で多様性が認められる.コラーゲンは骨基質の構築と機械的強度の付与に最も重要な基質蛋白であり,その翻訳後修飾の程度(例えば,コラーゲンリジン残基の水酸化の程度)はコラーゲン線維の形成とミネラルの沈着に大きく影響する.そこで,「歯槽骨(顎骨)の表現型とその加齢変化にはヒト固有のコラーゲンの(生化学的)性状が少なからず関与する」という仮説を立て,コラーゲンの性状と顎骨の表現型およびその加齢変化との関連を調べるために,以下の研究計画を設定した. (1)老化促進モデルマウス(老年性骨粗鬆症モデルマウス)とそのコントロールマウス(通常老化マウス)の下顎骨を用いて,典型的に老化した2種類のマウスの顎骨の表現型とコラーゲン性状との関連を調べる. (2)インプラント術前のCTによるレントゲン検査の結果から,ヒト下顎骨の表現型の多様性を具現化し,骨量と年齢,性差,歯の有無との関係を調べる. (3)ヒト献体の下顎骨を用いて,下顎骨の骨量,ミネラル量,コラーゲン量,コラーゲンリジン残基の水酸化の程度を調べ,下顎骨の表現型とミネラル,コラーゲン生化学的性状との関連およびそれらと年齢,性差,歯の有無との関連を調べる. 以上を統括して,仮説の信憑性を検討し,コラーゲン生化学的性状による歯槽骨(顎骨)の表現型およびその加齢変化パターンの同定の可能性を探る.
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