研究概要 |
1.本研究の目的は、平成20年度から23年度の4年間において、口腔内への溶出残留モノマーを低減し、高齢者にとって安全な歯科補綴装置を提供する手法として、メチルメタクリレート樹脂の表面改質による低エネルギー電子線を有効利用した歯科専用の小型照射装置を開発することである。歯科診療用樹脂製器具の滅菌処理を確実、安全、容易、安価に行うための照射条件もあわせて確立することも視野に入れた研究計画を立案した。 2。低エネルギー電子線照射装置は、電子線照射源、電子線照射チャンバー、制御用PC、その他の周辺装置から構成されているが、義歯や歯冠修復材料などの形状に適する仕様ではない。そのために、平成20年度から23年度にかけて、電子線照射源(EB-ENGINE、浜松ホトニクス)を購入し、歯科専用の照射システムの開発に向けて、平板試料照射後のMMAモノマー溶出試験・評価を行いながら、均一照射回転機構にも焦点を絞り装置の仕様を決定したことにより、本学の施設内に歯科専用の低エネルギー電子線照射装置を設置することができた。さらに、メチルメタクリレート平板樹脂試料表面のコンピュータシミュレーションによる電子線エネルギー侵入深度分析、上下顎義歯」の表面における電子線吸収線量測定を実施した。 3.最終年度は、低エネルギー電子線照射の有効性を拡大するために、照射前後でメチルメタクリレート樹脂表面の化学構造状態,表面粗さ,ぬれ性の変化を検討し、主鎖の切断,表面粗さの増加,ぬれ性の向上が示された。さらに、メチルメタクリレート樹脂表面の殺菌効果について、大腸菌を指標菌として照射条件を調べた。その結果、比較的少ない線量で照射時間も1分程度で十分な殺菌効果を得ることが確認できたことから、低エネルギー電子線照射装置を総合的に評価することができた。
|