研究概要 |
(研究の背景)我々は,KRLFRRWQWRMKKYという14アミノ酸残基よりなる塩基性抗菌性ペプチドJH8194を合成し,このJH8194は,アンホテリシンBと比較しても非常に高い抗菌性を示すことを明らかにした.その後,本ペプチドに間葉系幹細胞の増殖能があることを見出し,さらに,間葉系幹細胞に対して骨分化の促進能をもつことを明らかにした. (研究の目的) 以上の知見より,このJH8194を骨治癒剤などとして応用可能であると考え,インプラント体(チタン表面)に固定化することで,組織内では,より早い幹細胞の増殖能と骨分化促進により骨治癒の促進を行うことを通じ,オッセオインテグレーションを獲得することが可能となると考えられるため,その基礎的検討を行う. (研究の方法) JH8194をチタン表面に固定化した状態においても,骨芽細胞の分化を促進することについての検証を行った。骨芽細胞としては,(骨芽細胞様細胞として知られるMC3T3細胞を用いた。骨分化マーカーとしてRunx2,OsterixおよびOPN mRNAを対象として,その発現をリアルタイムPCRによって定量することによって検討を行った。 (研究成果) 塩基性抗菌ペプチド固定化チタンおよび多孔質チタンについて骨芽細胞の骨分化をin vitroでの検討を行った結果,以下の知見を得た。可溶性JH8194による分化マーカーの発現は,コントロールと比較して2~4倍程度であった。これに対して,JH8194固定化チタンの場合,Runx2,OsterixおよびOPN mRNAの発現を著しく促進し,約20~40倍の分化マーカーの発現を認めた。以上より,JH8194を固定化することによって,骨芽細胞の分化を促進することが可能となることが明らかとなった。
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