研究概要 |
本研究は、各組織あるいは各組織幹細胞の形質膜蛋白質を差次的プロテオミクスにより網羅的に解析して歯髄幹細胞に特異的なマーカーを得ることにより、他の組織幹細胞から歯髄幹細胞を誘導し、安全で侵襲性なく象牙質・歯髄再生のための幹細胞源を得る新しい方法を確立することを目的とする。本年度はまず、歯髄組織のプロテオーム解析の最適条件の決定を行った。同一個体のイヌの歯の正常歯髄組織および歯肉を細切し、各々PBSに溶解し、超音波処理を行った。遠心分離機で上清と沈渣に分け、沈渣はRIPAバッファーを用い同様に可溶化を試みた。各々の可溶性画分はトリプジンで消化し、得られたペプチドにnano-LC/MS/MSを用いてショットガン法により解析した。イヌのデータベースから歯髄、歯肉の数多くの蛋白質が同定され、それらの比較を試みたが、現在までに歯髄組織に特異的な蛋白質は見つかっていない。よって、現在、同様に歯髄と歯根膜組織由来蛋白質の比較を行っている。また、歯髄幹細胞をまり未分化な形質に転換し、その差次的プロテオミクスを行うことも試みている。すなわち、幹細胞のマーカーSox2,Rex1,STAT3,Nanogのreal-time RT-PCRによる発現により、歯髄幹細胞に脱分化を誘導する2i(CHIR99021およびPD0325901)の最適濃度および作用時間を決定し、現在この条件を用いて、作用前後での差次的プロテオミクスを行い、歯髄幹細胞に特異的な蛋白質の解析を行っている。
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