研究概要 |
microRNA(miRNA)は発生・分化や様々な器官における多くの遺伝子の発現を制御していることから、ヒト疾患への関与も示唆されており、近年、癌遺伝子あるいは癌抑制遺伝子としても注目されている。現在までに、710種類のヒトmiRNAがゲノム中に存在することが明らかにされており(Sanger miRNABase lO.0)、いくつかは、ヒト癌発生への関与が示唆された報告もある。しかし、口腔領域において、miRNAを用いた本格的な網羅的プロファイリングは報告されていない。 本研究では、正常口腔粘膜上皮3種類と口腔癌細胞株ll種類(HSC2,HSC3,HSC4,Ca9-22,KON,SCC4,0K92,0SC19,HO1N1,Sa3,H1)を用いて、ヒトmiRNA1083種類(インビトロジェン新規同定遺伝子373種類を含む)のプローブを搭載したNCodeTM Human miRNA Microarray V3を使用してマイクロアレイ解析を行った。その結果、正常口腔粘膜上皮と比較して口腔癌細胞株で著明な発現変動を示し、口腔癌に関与していることが示唆される13種類のmiRNAを同定した。そのうち、口腔癌細胞株で強発現していたmiRNAは、miR-196a,miR-155であった。一方、発現減弱していたmiRNAはIVGN-novel-miR_3547,IVGN-novel-miR_3345,miR-100,miR-125b,IVGN-novel-miR_3673,IVGN-novel-miR_3338,let-7c,let-7b,IVGN-novel-miR_3617,miR-222,IVGN-novel-miR_3353であった。 今後は、定量的PCRにて、細胞株及び臨床検体における同定したmiRNAの発現を確認し、臨床指標との相関関係について検索する。さらに、細胞株を用いた形質転換実験による機能解析を行う予定である。
|