研究概要 |
間葉系幹細胞は優れた増殖能と多分化能を有し,再生医療の細胞源として有用であることが知られている.申請者らは,これまでにヒトから採取された滑液を分離培養し,骨芽細胞および軟骨細胞への分化能に差があることを明らかにした.その採取された分化能に差が生じた理由として,臨床症状と関連があり,症状の程度に関連があると考えられたためである. 本研究では,顎関節症患者の臨床症状と分化誘導能の関連について検討を行った.これまでに顎関節症IIIbと診断された患者のうちで,パンピングマニピュレーションを行い,滑液を採取保存ができた患者のうち,顎関節MRI撮影,開口量,顎関節痛(Visual analog scale;VAS)などの詳細な臨床所見が確認できた10症例を洗濯して,その接着細胞を分離培養した,そして,骨芽細胞または軟骨細胞への分化誘導をそれぞれ調べ,誘導分化能の高い5症例と低い5症例に分類し,臨床症状との関連を検討した. 結果は,疹痛の程度により,骨芽細胞および軟骨細胞への分化誘導は,2群間で有意差を認めた.一方,開口量に関して有意差は認めなかった. 臨床症状において,特に顎関節痛は,その滑膜炎の程度と関連があることが知られているが,滑膜炎の強度が強い患者から採取した滑液内浮遊細胞において,in vitroでは骨芽細胞または軟骨細胞への分化誘導能は高いと考えられた.
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