研究概要 |
本研究は,顎関節滑膜細胞由来の幹細胞を採取・培養して,その細胞に遺伝子を導入して顎関節内に戻し,機能を失った関節構成組織の再生法や口腔領域の欠損した骨組織を再生させる治療法の開発を目的としている. I.平成20~21年度では、ミニコイルスプリングを使用した機械的負荷によるウサギ顎関節炎モデルを作成し,手術3日後,1週後および4週後(各々n=5)に周囲組織を含めて摘出し,顎関節組織標本作製を行った。この結果,4週後では、コイルスプリングを装着した顎関節に無菌的機械的炎症が誘発された。また、炎症が強かった関節腔からの滑液細胞は、非常に未分化で後に多分化能が強い事が分かった。滑膜細胞の中には未分化な細胞が存在し,それらを採取・培養後に目的組織の遺伝子を導入して,組織形成を行えることが示唆された. II.平成21年度の研究を平成22年度に繰り越し,引き続き研究を進めた. 申請者らが独自に作製した骨組織再生のためのBMP-2発現アデノウイルスベクターによるBMP遺伝子導入法を応用し,遺伝子(BMP-2)をアデノウイルスベクターに組み込み培養した.結果は,強度の滑膜炎を起こした滑膜細胞へ導入した群の方が,顕著に培地中のアルカリフォスファターゼの上昇がみられた.これまでに申請者らが行ってきた方法にて,この細胞塊の骨組織誘導能について検討した.すなわち,培地中の細胞塊をウサギ下腿筋肉内に移植し,骨誘導能を調べた.結果は,この方法においては,移植された細胞塊は,筋肉内では2-3日で壊死または線維芽細胞様細胞に置き換わり,異所性骨組織は形成されなかった.細胞移植に関しては,移植された細胞の組織中での温存技術の開発が必要と考えられた.
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