研究概要 |
多くの癌に対して癌ペプチドを用いた特異的免疫療法が試みられているが、癌に対する免疫監視機構やその調節機構は十分に理解されておらず、多くの問題が残されている。本研究では、口腔癌に対する免疫監視機構および口腔癌による免疫監視機構の調節機能を十分に理解し、その上で有効なオーダーメイド免疫療法と早期診断法の開発を目指している。本年度は以下のような2つの研究を行った。 1) 癌細胞に対する免疫監視機構の解析 口腔扁平上皮癌患者から採取した末梢血単核球(PBMC)に複数の癌抗原ペプチドをふりかけて培養することでPBMC中の細胞傷害性T細胞(CTL)前駆体からCTLを誘導し、IFN-gammaの産生によって判断した。CTL誘導の有無により口腔扁平上皮癌ペプチドワクチンの候補として期待することができる。現時点で高頻度にCTLを誘導できる抗原ペプチドはSART-1であった。抗原ペプチドを用いたテトラマー法やDNAプローブ法では現時点では成功していない。新たな抗原ペプチドの同定方法として、最新の分子生物学的手法を駆使した1)SSCPを用いる方法、2)West-Western法、3)TCR transfectant法を用いて解析途中である。 2) 癌細胞による免疫監視機構調節分子の発現の解析 口腔扁平上皮癌患者における免疫調節分子の発現を免疫組織学的染色およびin situ hybridization法で解析したところ、HLAクラスIおよびII、B7ファミリー(CD28,CD80,CTLA-4,ICOS,B7h)、接着分子(ICAM-1,PD-1)、T細胞のアポトーシスを誘導するRCAS1の異常発現がみられた。現在はさらにその発現調節機構を解析している段階である。また近年はそれらの分子のsingle nucleotide polymorphismにも注目し研究を進めている。
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