研究概要 |
平成21年度の研究では、軟骨下骨層への侵襲が軟骨代謝に及ぼす影響を検討した。 1) 軟骨下骨由来骨芽細胞の培養上清中の軟骨破壊因子の検出 コンフルエントの骨芽細胞の培養液中にIL-1βを添加し培養した後、新たな培養液に交換、さらに24時間後に培養液を回収し、タンパク質アレイ法を用いて各種サイトカインの発現を解析した。その結果、IL-1β,IL-1α,TNF-α,IL-6の著明な増加が認められた。さらに、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現の検討では、MMP-1, 3, 13の発現亢進が認められた。 2) 線維層由来線維芽細胞と軟骨層由来軟骨細胞の基質代謝に対する軟骨下骨由来骨芽細胞培養液の影響 実験1と同様に、骨芽細胞の培養液中にIL-1βを添加し培養した後、新たな培養液に交換、さらに24時間後に培養液を回収した。その培養液を用いて線維層由来線維芽細胞および軟骨層由来軟骨細胞を培養した。軟骨細胞における基質合成能の検討では、プロテオグリカン合成能、コラーゲン合成能、増殖能が、それぞれ有意に低下した。また、II型コラーゲンおよびアグリカンの遺伝子発現は有意に低下した。一方、X型コラーゲンおよびBone Sialoproteinの遺伝子発現は有意に亢進した。 さらに、MMP-1, 3, 13の発現の亢進が明らかになった。 以上の結果より、軟骨下骨層に存在する骨芽細胞がサイトカインによるストレスを受けると他のサイトカインの産生が亢進するとともにMMPが誘導され、軟骨基質の破壊が生じる可能性が示唆された。さらに、ストレスを負荷した骨芽細胞が産生する何らかの生理活性物質の作用により、軟骨細胞における基質産生能が低下するとともに、軟骨細胞自身によるMMPの産生も亢進することにより、軟骨基質の分解が進むものと考えられた。
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