研究概要 |
今年度は,昨年度の予備研究成果を踏まえて,歯周病原生細菌およびその病原因子(組織傷害性酵素,外毒素,内毒素),宿主が産生する炎症性メディエーターおよびサイトカインの検出系の開発を進めてきた.まず,これまで開発してきたセンサーチップを用いてヒトサンプルを測定し,そこで得られた成績の再現性および定量性を検証したところ,生体材料では.数マイクログラムのオーダーまで検出可能であることが明らかとなった.しかしながら,歯周病の病態を把握するためには,感度を向上させていかなければ実用化することは難しいと判断した.そこで,連携研究者である北九州市立大学・国際環境工学部・磯田隆聡准教授と意見交換を行い,センサーチップの基板材料として金を用いることで感度の向上が図れないものかということを提案し,工学的な視点から様々な改良を試みた.さらに,歯周病細菌の検出系では,我々の研究グループが作成したモノクローナル抗体の性状を網羅的に解析し,抗体価および特異性の高いクローンを見出し,2種類の異なるエピトープを認識する抗体の組み合わせで,歯周病細菌を100cells/mlのオーダーで検出することができるようになった. 以上の結果から,今回の礒田准教授が開発した抗原抗体反応を利用したバイオセンサーチップを用いることで,複数の歯周病細菌の検出が可能となった.しかしながら,生体材料から炎症性サイトカインを検出するという当初の目的に関しては,生体内の塩が静電誘導を基本原理とするセンサーチップの感度向上の妨げとなることが判明した.そこで,他の工学系の研究者と予備実験を行い,電気誘導法や蛍光法による測定機器の開発が電気誘導を基本原理とする測定法より,より再現性および感度の高い測定が可能であることが明らかとなった.今後,さらなる感度の向上を目指して研究を展開していくつもりである.
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