研究概要 |
本年度は口腔状態とその変化の予測に役立つと考えられる生活習慣やメタボリックシンドロームおよびその構成因子との関連性について解析を試みた。 国立循環器病センター予防健診部の健康診査を受診した住民3705名を対象とし喫煙,飲酒習慣およびメタボリックシンドローム構成因子と歯数との関連性を調べたところ,男女ともに年齢,血圧,総コレステロール,HDLコレステロール,血糖値およびBMIと歯数に有意の関連性を示し,さらに女性では中性脂肪にも有意の関連性を認めたが,腹囲は男女ともに歯数と有意の関連性は示さなかった。次に,従属変数を歯数20本未満/以上とし,2変量解析で関連性を認めた変数を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った結果,年齢および性別で調整を行っても,歯数は高血糖,低HDLコレステロール,高中性脂肪およびメタボリックシンドロームと有意の関連性を示し,そのオッズ比は1.6,1.3,1.2および1.2であった。喫煙や飲酒および歯磨き習慣といった生活習慣は歯数と関連する傾向を示したが,有意の関連性は示さなかった。しかし,これらの生活習慣は血糖値と独立して有意の関連性を示し,そのオッズ比は1.4,1.5および1.4であった。 以上の結果より,全身状態は歯周状態に影響を与えていることが明らかとなり,さらに,喫煙,飲酒および歯磨き習慣といった生活習慣は歯周状態に影響を与えている可能性が示唆され,血糖値のコントロールを介して全身疾患の予防に役立つことで,QOLを向上させている可能性が示唆された。
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