研究概要 |
歯周病は,炎症性疾患として全身に影響を与えるだけでなく,歯の喪失原因となり,咀嚼能力の低下が,栄養状態の変化を通じて全身の健康に影響を及ぼしている可能性がある。本年度は咀嚼能力および歯数と全身状態との関連性について調べた。 国立循環器病センター予防検診部の健康診査を受診した大阪府吹田市一般住民3503名(男性1588名,女性1915名,平均年齢68.6歳±9.7歳)を対象に,質問票(歯数,性別,年齢,喫煙の有無,飲酒の有無,既往歴)を用いた調査を行った.得られた結果をAdult Treatment Panel IIIの診断基準に基づき,血圧130/85mmHg以上,中性脂肪(TG)150mg/de以上,HDLコレステロール(HDLC)男性40mg/de,女性50mg/de未満,血糖値110mg/de以上,腹囲に関してはアジアの診断基準に基づき男性90cm.女性80cm以上を異常値とし,正常群と異常群に分類した.また3つ以上異常値を保有する者をメタボリックシンドローム群としたところ.年齢,収縮期・拡張期血圧,総コレステロール.HDLC,血糖値において歯数20本以上群と20本未満群との問に有意差が認められた.歯数20本未満の群では,血圧,血糖値,HDLCが異常となり,メタボリックシンドロームと判定されやすい傾向が見られた.歯数が20本未満であることのオッズ比は.高血糖で1.61 (P=0.001).低HDLコレステロール血症で1.34 (P=0.006).高中性脂肪血症で1.27 (P=0.024)およびメタボリックシンドロームで1.22 (P=0.03)であった. 以上の結果から.メタポリックシンドローム群では歯数が少ないことがわかり,全身の健康を維持するために歯数と咀嚼能力の維持が重要であることが推察された.
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