研究概要 |
歯周病は,生活習慣病であると同時に他の生活習慣病と相互に関連を示している。特に,糖尿病の重要な合併症の一つであるといわれている。歯周病の存在により,糖尿病のコントロールは悪化し,コントロール不良の糖尿病は歯周病を悪化させる。また糖尿病は致死的疾患である動脈硬化性疾患の進展に関わっており,歯周病も重症化により動脈硬化性疾患の進展に関与していると考えられているため.両者が動脈硬化性疾患に及ぼす影響について本研究で調べた。 糖尿病患者を動脈硬化性疾患の有無において2群に分類して比較した結果,動脈硬化性疾患有り群は,なし群と比較して男性が多く,腎症が進展しており,高血圧,喫煙,歯周病が有意に高頻度であった。次に先程比較した臨床背景(年齢,性別,BMI,糖尿病罹病期間,HbAlc,網膜症,腎症,神経障害,高血圧,脂質異常症,喫煙,%CAL≧4mm)を説明変数として動脈硬化性疾患に関与する因子をロジスティック回帰分析により検討した結果,腎症,高血圧,歯周病の診断指標である%CAL≧4mm,HbAlcが有意な説明変数であった。つまり糖尿病における動脈硬化性疾患に歯周病が関与することが示された。どのように歯周病が動脈硬化進展と関係しているかを明らかにする目的で,炎症・酸化ストレスマーカーと歯周病の診断に使用した.%CAL≧4mmとの関係を検討した結果,酸化ストレスマーカー細胞膜の酸化ストレスの指標である尿8-イソプロスタンが%CAL≧4mmと有意な正の相関を認めた。 以上の結果から,動脈硬化性疾患を合併した糖尿病患者において歯周病の頻度が高いことが明らかとなった。
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