研究概要 |
(1)ヒト乳歯・智歯歯髄から、幹細胞を分離してcell line化した。すなわちCD117陽性細胞を磁気分離し継代培養した。ただし4-5代毎にCD117陽性細胞を磁気分離する必要があった。これらの細胞はCD117, CD44H, OCT3/4, nanog, nestin, CK19, ALP, SPARC, P63は陽性であった。しかしCK18には陰性であった。 (2)上記細胞を、hepatic growth factor, dexamethasone, insulin-transferrin-selenium-x, oncostatin存在下で培養し、肝臓様細胞を誘導した。Albumin, AFP, HNF 4α, IGF-1は陽性で、グリコーゲン合成を認め、尿素合成量もコントロールに比べ有意に増加した。 (3)無血清培地(SFM)を4種作製した、SFM#1は1% ITS-Xと100μg/ml of Embryo-trophic Factor(ETF) ; SFM#2は1% Insulin-Transferrin-Selenium-X ; SFM#3は100μg/ml ETF ; SFM#4は100μg/ml ETF, 1mM Sodium Pyruvate, 25μg/ml Ascorbic Acid, 4ng/ml FGF-aからなる。なかでもSFM#1が、最も良好な増殖能、生存率そして幹細胞マーカー発現を示した。さらに、肝臓様細胞を誘導したところ、Albumin, AFP, HNF 4α, IGF-1は陽性で、グリコーゲン合成を認め、尿素合成量もコントロールに比べ有意に増加した。 (4)ヒト乳歯・智歯歯髄から、幹細胞を分離してcell line化したCD117陽性細胞を50ng/mL硫化水素に48時間暴露した。その結果、24時間で16.3±1.87%の細胞がアポトーシスを惹起した、対照は1.6%であった。ミトコンドリア脱分極も、対照の7.2%に比べ29.2±7.2%と有意に増加し、cytochrome C遊離も対照の0.1ng/mLに比べ0.8±0.1ng/mLと有意に増加した。caspase-9やcaspase-3も、それぞれ有意に増加したが、caspase-8は増加しなかった。以上より、硫化水素はミトコンドリア経路を経て、幹細胞にアポトーシスを発生する事が分かった。
|