医療に関連する多職種の連携による地域ぐるみの耐性菌感染対策システムの構築を目指して、今年度は、モデル地域における感染制御ネットワークの構築とサーベイランスの実施に向けた準備として、以下の調査を行った。 モデル地域の訪問看護ステーション78施設に、郵送法による在宅医療における薬剤耐性菌感染に関する調査を実施し、18施設(23.1%)からの回答があった。感染対策マニュアルの中にMRSA等の薬剤耐性菌感染症に関する項目を示している施設が83.3%で、その内容は感染者への対応手順、家族指導などであった。訪問依頼時に耐性菌保菌状況を確認している施設は61.1%で、これまでに保菌者の在宅ケアの経験がある施設は61.1%と保菌者の確認をしている施設は全て保菌者のケアの経験があることがわかった。施設移動時の看護サマリーに保菌状況を記載している施設は44.4%、訪問入浴など他のサービス提供者と耐性菌情報を共有している施設は72.2%であった。 また、モデル地域における耐性菌感染サーベイランスの実施に向けた体制作りとして、検査システムを持つ18施設に研究協力依頼を行い、7施設から協力承諾が得られた。これらの施設のESBLs-E.coli、MDRP、VREなどの検出総数を調査したところ、全体ではESBLs-E.coliが527検体、MDRPが32検体、VREは0検体であり、どの施設でも最も多かったはESBLs-E.coliであったが、その次に多く検出された耐性菌種は施設によって異なっていた。 加えて、地域の医療関連施設との情報交換並びに感染制御情報を発信するためのネットワークシステム開発に関する調査を行った。その結果をもとに、平成21年度上期には試験的なサイトを立ち上げ、情報交換を行う予定である。
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