本研究は、人々にとって遺伝医療がどのような形で進展していけばよいのかを検討する土台にするために、遺伝相談の場で何が起きているのか、その実態分析を踏まえて、質の高い遺伝相談の方法論と医療者の学習支援の方法を検討することを目的としている。 初年度にあたる本年は、国内外の文献収集と内容の検討及びこれまでの我々の研究成果を踏まえ、研究計画書を作成した。遺伝相談を介して、来談者や医療関係者という相談への参加者が、相談している問題をいかに理解したり経験していくのか、その実態を参加者各々の語りから明らかにし、問題の成りたちの条件(論理)を分析することを目的に実態把握を行うことにした。A遺伝子診療科において行われている出生前診断の相談に関わるクライエントと医療者双方に対し、相談後にそれぞれの立場で評価をアンケートにより行うことと、そのうち協力の得られたクライエントとその相談を担当した医療者にインタビューを実施することとした。本年2月に当該医療機関の研究倫理審査委員会の承認を得たので、3月より調査を開始した。調査手続きに当たっては、クライエントの人権擁護と倫理的対応をするため、インタビュアーや評価集計などには相談担当者が一切関わらないように、他施設の研究者の協力を依頼した。クライエントと医療者双方からの評価を試みた研究は本邦では初めてであり、またこれをもとに医療者の相談のための生きた学習教材が作成できると期待される。
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