本研究は、質の高い遺伝相談の方法論と医療者の学習支援の方法を検討することを目的としており、今年度は昨年の継続で以下のことを実施し、研究最終年度のまとめを行った。 1.学習教材としての事例2作目の作成 昨年作成した事例を基にドラマ化し、DVD教材を試作した。フォローアップワークショップで視聴し、参加者(学習者)の意見では紙上事例よりも、イメージがしやすく場面毎にカットして学習が可能になるなどメリットがあった。そのため、今年度2例目の事例で羊水検査を受けないと意思決定したカップルの相談過程をドラマ化し、DVD教材を作成した。今年度は予算執行の目途遅かったため作成した事例を用いた教材としての検証をする時間的余裕が持てなかったが、今後検証したい。 2.フォローアップワークショップの開催による学習方略の検討 「大人の学び方」を基本に2回にわたるワークショップを企画実施した結果、ある程度の経験を持つ専門職者の学習プロセスには、各々のもつ体験を活用して参加者とその体験を共有し、ディスカッションによりさらに体験の意味を深めたり広げたりすることができる優れた方法になりうることが確認された。またこのワークショップでは必要な知識を絞り込んで提供したことにより、クライエントのおかれた状況把握に直接役立ったと実感が持てていた。そのため参加者は一様にこのワークショップに参加したことに満足感を示していた。1回目のワークショップ参加後、実践の場に戻って、ワークショップでの体験をもとに積極的なクライエントへの関わりを試みており、このような学習を繰り返し行うことが、実践知を確実にしてゆくものであるということが示唆された。
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