本研究の目的は、全国の医療機関、保健所(保健センターを含む)を対象として、在日外国人に対する看護の現状を把握することである。昨年度に実施した医療機関を対象とする全国調査(「外国人入院患者への看護」および「外国人救急外来受診患者への看護」に関する調査の2種類)で得られたデータの入力作業を行い、分析を試みた。調査票を回収できた552病院のうち、82.2%の病院が「外国人患者への看護を行って困ることがある」と回答した。内容としては、特に言語の違いによって、患者の理解度の把握や不安の軽減など精神的支援の困難さが多く挙げられた。看護援助場面における困難としては、食生活の支援が挙げられ、宗教上の食事制限、病院食の理解、産後の食文化の違いなど、宗教や文化背景から、関わりが困難であるとの回答であった。平成23年3月に予定されていた多文化間精神医学会において4演題を発表予定であったが、東北地方太平洋沖地震の影響により学会が中止となったため発表できなかった。平成23年度に開催される然るべき学術学会において、改めて発表することとしたい。保健所(保健センターを含む)を対象とした調査については「市町村における保健師の在日外国人に対する保健活動の現状調査」と題して、平成22年10月に実施した。「平成21年版在留外国人統計」(入管協会)に記載されている全国の市町村1008施設、3507部を配付し1409部を回収できた。回収率は40.2%であった。データ入力作業、コーディングを済ませ、これから分析にとりかかるところである。これについても、平成23年度に開催される学術学会で発表したいと考えている。
|