本研究の目的は、全国の医療機関、保健所(保健センターを含む)を対象として、在日外国人に対する看護の現状を把握することである。医療機関を対象とする全国調査(「外国人入院患者への看護」および「外国人救急外来受診患者への看護」に関する調査の2種類)で得られたデータの分析結果については、平成23年9月に開催された第18回多文化間精神医学会(東京)において、4つの演題に分けて公表するとともに、関連領域の研究者、実務者と活発な議論を行うことができた。さらに平成24年3月に開催された3rd World Congress of Cultural Psychiatry(London)において発表を行い、諸外国の研究者と有意義なディスカッションが出来た。 保健所(保健センターを含む)を対象とした「市町村における保健師の在日外国人に対する保健活動の現状調査」については分析を進めた。「平成21年版在留外国人統計」(入管協会)に記載されている全国の市町村1008施設、3507部を配付し1408部を回収できた。回収率は40.1%であった。88.3%の保健師が外国人への対応・支援を経験しており、中でも母子ケースへの対応経験が最も多かった。90.3%の者が外国人への支援に対して困難さを感じていた。その理由としては、言葉の違いを挙げた者が最も多く、生活習慣の違い、経済的問題、健康や病気に対する考え方の違い、制度の違い、宗教の順に多かった。外国人への対応・支援に関して、今後何らかの対策が必要と回答した者は92.2%にのぼり、その具体策として最も多かったのは、施設内(保健センター等)に外国語の堪能な保健師を配置するとの意見であった。
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