研究概要 |
1.クック諸島において標式的な完新世海面変化曲線が得られているマンガイア島において,完新世離水サンゴ礁と海岸地形の調査を行った.注目すべき点は,現海面付近のマイクロアトールの^<14>C年代測定から,これまで不明であった海面上昇過程の年代と海面高度が特定され,さらに詳しい海面変化曲線が整備されたことである.よって,現海岸には上昇期のサンゴ礁が広く残されている可能性があることが明らかにされた. 2.ラロトンガ島とアイツタキ島において,前年度の海岸陸域での海岸低地断面調査に引き続き,礁原の断面調査と地形調査を行った.ラロトンガ島においては,海底地形図で認められたサンゴ礁を縁どる水深およそ10mの浅海平坦面について,潜水による地形観察により,礁原の沈水の可能性が確認された.これは海面上昇過程の中で,海面が安定したことを示唆する. 3.ラロトンガ島の完新世汀線変化の全体像を把握するために,これまで詳細な変化過程の得られている東岸に加えて,南西海岸の砂堤低地において横断方向に^<14>C年代測定を行い,汀線変化の過程を明らかにした.さらに,その他の数地点で最内陸の砂堤堆積物の年代決定を行った.これまでの調査結果と統合して考えると,最も海進が及んだ時期は5,000-6,000年前で,海岸低地の形成開始は5,000-4,000年前ごろから開始された.その後,もっとも幅の広い,東岸,南西岸では順次汀線が前進していった. 4.北東岸のカレカレ湿地は,地形的には完新世の砂堤列地形によって閉塞され,閉鎖以前に海の進入が予想されていた。しかし,泥炭によって埋積されており,海の進入の痕跡はなく,その理由が不明であった,今回,基盤の吏新世サンゴ石灰岩を地表面付近の数地点で確認し,これが完新世の海進を阻止していたことが明らかとなった. 5.南太平洋大学クック分校においてこれらの成果に関する講演を行った.これは,地元の新聞でも取り上げられた.
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