研究課題/領域番号 |
20401010
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
湖中 真哉 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (30275101)
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研究分担者 |
伊藤 一頼 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00405143)
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キーワード | 難民 / 東アフリカ / ケニア / 文化人類学 / 国際法学 / 国内避難民 / 紛争 / セーフティ・ネット |
研究概要 |
平成23年度は、交付申請書に記載した計画通り、平成22年度に本プロジェクトで実施した国内避難民の継続的臨地調査研究の成果を、日本文化人類学会第45回研究大会(2011年6月2日)で発表した。また、これまでの国内避難民とフード・セキュリティに関する研究成果を大阪大学グローバルコラボレーションセンター発行のGLOCOLブックレットに発表した。 平成23年度も、東アフリカにおいて国内避難民を対象として臨地調査研究を実施し、ポスト・コンフリクト状況下の経年変化を追跡調査した。その結果、以下の点が明らかになった。(1)東アフリカ牧畜民の居住域では、2010年からトウモロコシの粉や砂糖の物価が高騰しており、住民はその代替として米を購入する等の対応策をとっている。(2)紛争後、民族集団Aと民族集団Bの地域住民は、携帯電話によって家畜略奪者に関する情報を交換する体制を構築しているが、それが実際にうまく機能しており、紛争の拡大阻止に成果を挙げている。つまり、携帯電話というメディアを用いた新たなセーフティ・ネットの様相が明らかになりつつある。(3)近年、国際機関は「アフリカの角」地域の牧畜社会における紛争激化の原因を、気候変動による資源の枯渇に求めているが、現地調査の結果、地域住民は、乾期には紛争の発生は抑制されており、雨期に紛争が激化すると認識していることが解明できた。和平会議も、雨期には集中的に開催されており、乾期にはあまり開催されないことがわかった。(4)東アフリカ牧畜民の2集落において家畜を全く持たない世帯を対象として国内避難民の物質文化調査を実施した。その結果、国内避難民は、椅子、家畜の乳容器、斧などを優先的に持ち出していること、地域住民の相互扶助と日雇い労働が、セーフティ・ネットとして、生活の再構築に大きな意義を果たしていることが解明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、研究成果を日本文化人類学会第45.回研究大会において口頭発表し、大阪大学グローバルコラボレーションセンター発行のGLOCOLブックレットに図書として公刊することができた。また、予定通り東アフリカの国内避難民を対象とする海外臨地調査を実施することができた。その結果、携帯電話というメディアを用いた民族間連絡網による平和構築実践や国内避難民の物質文化の様相等、セーフティ・ネットの新たな諸側面を解明できたため、順調な進展と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成23年度の海外臨地調査において新たに解明できた東アフリカの牧畜社会における国内避難民のセーフティ・ネットについて、とりわけ、(1)携帯電話というメディアを用いた民族間連絡網による平和構築実践というセーフティ・ネット、(2)国内避難民の物質文化調査によって明らかになった生活再構築実践というセーフティ・ネットの2点に注目しながら、調査資料の整理と分析を進める推進方針を採りたい。 なお、海外臨地調査の進展によって、本研究が対象とする人々が深刻な人権侵害を受けていることが判明したため、彼らに及ぼす影響に配慮して、研究成果の公表にあたっては、民族名、国名については仮名を用いて表現し、あえて明示しない対応策を採ることとした。
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