今年度は、大英博物館、アムステルダム国立美術館、クストディア財団(パリ)、パリ国立図書館、ナショナル・ギャラリー(ワシントン)、ボストン美術館、メトロポリタン美術館、ブリックック・コレクション(ニューヨーク)などでレンブラント版画の実地調査をおこなった。これらの美術館で東洋紙に刷られたレンブラント版画を見るとともに、18世紀、19世紀の古いレンブラント版画関連文献を渉猟し、東洋紙に関する記述を収集した。 2011年3月から国立西洋美術館で、レンブラントに関する展覧会を開催したが、同展には30点以上の和紙刷り版画を展示することができた。このような具体的な形で、本研究の成果の一部を反映させることができたのは、まことに幸運なことであった。また、同展のカタログはそのほとんどが申請者ひとりで執筆されたが、個々の作品解説においても、和紙との関連が記述された。また、申請者による巻頭論文として、「淡い色の紙:レンブラントの和紙刷り版画」も執筆された。 展覧会開会式翌日には、レンブラントの明暗表現や和紙との関連をテーマとした国際シンポジウムが開催される予定であったが、東日本大震災のために中止されたことは遺憾であった。しかし、すでに発表原稿もほぼ揃っていたこともあり、この実現されなかったシンポジウムについては、せめて、報告書を出版することで、埋め合わせたいと考えている。
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