1991年にいわゆる大学設置基準の大綱化がなされて以来、日本の多くの大学で教養課程が廃止され、英米文学や英語を広く扱っていた英文科という名称が日本の多くの大学から消滅し、ドイツ語ドイツ文学、フランス語フランス文学などの専任のポジションも著しく激減してしまった。並行して、高校時代から受験勉強に集中する咋今の大学生にとってはますます文学作品に触れる機会が減少し、文学離れは顕著な現象として観察されるようになった。一方で、大学における文学研究は文学理論研究を中心に大きな変化を遂げた。こうした状況を反映して、大学の教育現場においては、高度に発達した文学理論を駆使する教える側と、文学作品に触れる経験のごく浅い教わる側との乖離は相当深刻になってきている。そのためか、どの大学においても文学の専攻生の数は激減している。本研究は文学教育がどのような姿をとるべきか。ことに将来、文学研究者になることを目指していない一般の学生にとって、文学教育はいかなる形をとったらよいのか。教養学部あるいは教養教育において、どのような作品をどのようなスタイルで教えたら良いのか、こうした問題をアメリカ、イギリス、フランスなどの諸外国、そして日本での現状を踏まえながら、国際比較し、あるべき姿を模索しようとするものである。その際、数量的あるいは統計学的な比較研究をめざすのではなく、長く教育の現場にたずさわってきた熟練した教育者から直接、経験談をとおして将来を見据えた知見を集めようと意図するものである。
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