研究概要 |
第二年度である平成21年度は,調査団を組んで2回の現地調査を行った(初年度からの通算で第3回目と第4回目)。第3回目は2009年9月に江華瑶族自治県と江永県で,第4回目は2010年2~3月に江永県を中心に行った。第3回調査では言語に関して(1)江華県(白芒営鎮,大墟鎮など)の土話の音韻・語彙・文法,(2)江永県全域の言語分布状況を,物質文化に関して(3)江永県農村の民居の形式と構造を,主要考察内容とした。第4回調査では,言語に関して(4)江永県北部の文法調査,(5)近隣各県(藍山県,寧遠県,新田県など)の官話の調査を行い,且つ(6)江永県西南部農村で同一世帯を対象として言語と歴史の調査を同時並行で行った。調査の結果,江華・江永両県に関して明らかになったのは次の諸点である。 (1)先行研究には一切記されていない言語の存在が昨年度に続いて更に5種明らかになった。その中には系統不明な言語が含まれており,平成22年度での継続調査を必要とする。 (2)先行研究では粗雑な記述しか為されていない言語分布状況が,ほぼ全域にわたり村のレベルまで解明できた。 (3)両県に分布する土話の一種である都話に関して,地点間の言語系統論上の親疎について初歩的な把握ができた。 (4)各言語の音韻・語彙・文法の特徴について基本的な把握ができた。 研究成果の発表は複数行った。調査結果を直接反映する口頭発表は次のとおりである。(1)吉川と田口は東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究プロジェクト「タイ文化圏における山地民の歴史的研究」2009年度第一回研究会に招待され,それぞれ報告講演を行った。(2)溝口は日本建築学会の日本建築史小委員会が主催する平成21年度公開委員会「日本建築様式史の再構築」連続シンポジウム第2回「日本寺院建築史と住宅建築史の接点と境界」に招待され講演を行い,日本の寺院建築と住宅建築の形式と技法考察の視点を提示する中で湘南の瑶族の住まいにみる形式の混在を実例として指摘した。シンポジウムの記録は4月に冊子となる予定である。
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