研究課題
最終年度である平成23年度は,調査団を組み,2010年9月に江華瑶族自治県で1回の野外調査を行った(初年度からの通算で第7回目)。主な調査内容は,(1)江華県農村(大墟鎮)の土話の語彙調査,(2)江華県農村(大墟鎮)の官話の漢字音調査,(3)建築班が作成した画像入り統一フォーマットの調査票を使用しての,7地点の各種土話に対する,伝統的家屋の構成要素とその他建築物に特化した語彙調査,である。野外調査による直接の成果については,吉川雅之・溝口正人が第1回中国方言文化国際学術討論集会で,口頭発表を行った。これは言語学と建築学との学際的視点に立脚したもので,(1)収集した語形が示す空間観念の類似性に注目し,過去に起きたと見られる言語接触の痕跡を明らかにし,(2)消失の危機に瀕している土話と伝統的家屋の保存に関して提言を行った。(1)は,家屋・村落における空間の構造・使用・観念についての考察である。空間の構造・使用・概念は,本研究の最終的な課題である「当該話者集団の史的形成」を考察する際に、重要な判断材料の一つとなると考えている。今年度の野外調査には東京大学の大学院生が1名参加し,江華県の土話に対して言語調査を行った。その結果は,日本中国語学会第60回全国大会で口頭発表を行った後に,今年度東京大学に提出された修士学位論文にまとめられた。また,昨年度野外調査に従事した東京大学の大学院生1名が,江永県の土話を主題とした修士学位論文を提出した。その他に,一部の研究者によって土話との系統上の関係が指摘されている粤語(即ち広東語)について,より早期の姿を把握することが問題の解決に不可欠であるとの認識から,従来研究が行われてこなかった19世紀中期以前の文献に欧文で記される粤語音(漢字音)についての整理と分析を,吉川は今年度も継続して進めた。特徴の指摘とそれに基づいた基礎方言の特定は,学会での口頭発表や学術誌への投稿論文で行った。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
第1回中国方言文化国際学術討論集会予稿集
ページ: 151-160
日本建築学会東海支部研究報告集
巻: 第51号 ページ: 749-753
日本中国語学会第61回全国大会予稿集
ページ: 57-61
東洋文化研究所紀要有
巻: 160 ページ: 226-258
Programme booklet, the 16th International Conference on Yue Dialects
ページ: 8
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~hongkong-macao/grant-in-aid_2008-2011.html