研究概要 |
本研究は中国湖南省南部で話されている系統未詳の「湘南土話」に対し,音韻・語彙・文法についての全面的な野外調査を行い,言語体系全体を記述することを初期の目標とする。そして通時的視点からその成立過程を考察し,漢語と非漢語の中における位置付けを提唱することを中期の目標とし,将来的には中国華南における漢語史を再検討する材料としたいと考えている。土話の成立過程の解明に関しては,言語調査のみによる一面的考察では不十分であると考えており,建築や歴史に関する調査の助けを借りることで,話者集団の形成を多面的に考察することを目指す。 湘南土話は湖南省最南部の永州地区と〓州地区に分布する方言群の総称であり,周囲の漢語系諸語(粤語,客家語,湘語など)に比して際立った特徴を多く有する。その一方で,語彙の特徴から基層には非漢族である瑶族の勉語(ミエン語)が存在する可能性が有り,華南においてどのように漢語が浸透していったかを問う上での重要な言語資料を蔵する。
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