本年度は当研究課題の2年目にあたったため、研究代表者(太田出)・連携研究者(山本英史、稲田清一、小島泰雄、佐藤仁史)・研究協力者(吉田建一郎、長沼さやか)が夏季・冬季・春季の3休暇を極力利用して太湖流域農村現地調査を実施した。これらの期間の総計7週間ほどの間、調査候補村である、上海市青浦区の広富林鎮・陳坊橋鎮・王家村・新陳家村・大長浜村に入り、解放後の土地所有(地籍図)、宣巻藝人、漁業、日本住血吸虫病(血吸虫病)防治などについて老農漁民からヒアリングを進めた。昨年から計画していたGPSによる測量も実施した。その成果は10月に開催したミニ・シンポジウムにおいて侯楊方(中国復旦大学)により報告された。また各調査より帰国後、ただちにテープ起こしを開始、現在、解題論文の執筆も含めて、佐藤仁史・太田出・藤野真子・緒方賢編『中国における宣巻藝人の活動-太湖流域社会史口述記録集II』(仮題、汲古書院)の出版・公開を予定している。本書につづいて『中国の水郷市鎮と周辺農村-太湖流域社会史口述記録集III』『中国における漁民の捕撈と陸上定居-太湖流域社会史口述記録集IV』などの口述記録も整理中である。また今年度から漁業方面の調査を充実させるため、文化人類学を専門とする長沼さやか氏に研究協力者として調査に参加してもらった。
|