本年度は本研究課題の最終年度にあたるため、連携研究者・研究協力者とともに夏季休暇と冬季休暇の2回にわたって補充調査的なフィールドワークを実施し、それらの成果を口述記録集として整理・編集する作業を行った。 夏季休暇は8月3日から8月23日まで、冬季休暇は12月22日から12月30日まで、それぞれ江蘇省呉江市、上海市青浦区・松江区の農漁村で老農民・老漁民から聴き取りを行い、これまでの3年間の聴き取りで不明であった部分を補充した。 これらの補充調査を踏まえたうえで、口述記録集の整理にも取り組み、佐藤仁史・太田出他編『中国農村の民間藝能--太湖流域社会史口述記録集2』(2011年、汲古書院)を出版した。本書は、聴き取りを実施した様々な項目のうち、民間藝能、特に太湖流域の農漁村に伝統的な宣巻・賛神歌について整理・編集を行い、自らの研究成果を公表すると同時に、他の研究者との間に資料を共有するのを目的としたものである。 そして最後に1月に代表者・連携研究者・協力者による最終会合の場をもうけ、これまでの個別研究の進捗状況を各自報告するとともに、今後の研究の展開として、山村地区をも含めた比較研究が必要であろうという結論に至った。今後はこれまでの農村・漁村研究を基盤として、江南デルタの山村地区も視野に入れていくことが新たな課題となろう。
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