研究課題
本研究の初年度に当たる本年度は、平成20年7月下旬から9月上旬までトルコ共和国において考古学的な発掘調査を実施した。調査対象としたのは、新石器時代の社会システム再編期に当たると考えられる土器新石器時代の遺跡サラット・ジャーミー・ヤヌである。本年度の調査の結果、住居跡、炉跡、埋葬などの遺構が数多く検出され、土器新石器時代の集落構造を把握することが可能となった。その基本的な形は、ピゼと呼ばれる土壁によって構築された建物が独立して配され、その間のオープンスペースに2種類の炉跡が認められるというものであった。建物が廃絶される際に建瘍内部が意図的に埋められ、乳児・幼児の埋葬がまとめて行われたことも明らかになり、この時代の集落のあり方を検討する上で貴重な資料が得られた。また、この地域最古の土器群が検出されたことは特筆すべき成果であったが、先行する先土器新石器時代には数多く認められる威信財的性格をもつ遣物はほとんど出土しないことも明らかになった。これにより、土器新石器時代における集落規模の縮小、公共的建築物の消失、威信財の減少という姿が明確となり、先土器新石器時代的社会システム崩壊後の状況を具体的資料を基に措くことが可能となってきた。その一方で、動物骨の分析からは、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタの4種の家畜が既に存在することが確認され、植物遺存体の分析ではムギ類やマメ類などの栽培種が検出された。土器新石器時代の社会が農耕牧畜を基盤とするものであったことが確認されたわけであるが、社会システムの面では逆に衰退しているような状況が窺われ、生業と社会の関係を問い直す必要が出てきたことになる。
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第16回西アジア発掘調査報告会報告集
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