研究課題
本研究の最終年度に当たる本年度は、トルコ共和国において7月下旬から9月上旬までの期間、これまでの発掘調査から出土した遺物の分析を中心とする調査を実施した。調査の対象は、土器新石器時代の遺跡サラット・ジャーミー・ヤヌと先土器新石器時代の遺跡ハッサンケイフ・ホユックで、いずれもトルコ共和国南東部、ティグリス川流域に位置する遺跡である。サラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡は昨年度までに発掘調査を完了し、約4.5mにも及ぶ土器新石器時代の堆積が確認され、3つの時期に細分できることが明らかになっている。今年度は、現地の博物館の協力を得て、土器、打製石器、その他の遺物の分析ならびに遺物整理作業をおこなった。動物骨と植物遺存体については、相手国政府の許可を得て一部を日本に持ち帰り、分析作業を実施した。今年度の研究でサラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡に関する調査はほぼ完了し、遺跡規模、集落構造、遺物の在り方など、土器新石器時代遺跡の様相を具体的に把握することができた。もうひとつの遺跡ハッサンケイフ・ホユックは、サラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡に先行する時代の遺跡であり、新石器時代における社会システムの変動に注目する本研究にとって、貴重な比較資料を得ることができた。これらの研究を通じて、先土器新石器時代と土器新石器時代の間で集落規模、公共建築物の有無、高度な工芸技術を背景とした威信財などに大きな違いが認められることが明確となり、先土器新石器時代にひとつの頂点を迎えた社会システムが、土器新石器時代に一旦崩れてしまった様子を具体的資料を基に描くことが可能となった。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
31.Kazi Sonuclar Toplantisi 3.Cilt
ページ: 435-450
Proceedings of the 6th International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East.
ページ: 417-429
Terra Nostra
巻: 2010(2) ページ: 88
http://www.histanth.tsukuba.ac.jp/~tap/scy_JP/index.html