研究課題
本研究は東北シリアに位置するテル・セクル・アル・アヘイマル遺跡を発掘調査し、そこで収集した考古学的、古環境学的証拠をもとに紀元前7千年紀における西アジア新石器時代社会の変容過程について論じることを目的とする。平成22年度には下記の研究を実施した。(1)平成22年6月末から8月初頭にかけて、上記遺跡の発掘調査をおこなった。それにより、紀元前8千年紀、7千年紀双方の集落について、その社会構造を定義、そして比較しうる知見を得ることが出来た。すなわち、集落内に展開する建物群の配置や集落内、建物内の空間利用パタンなどである。また、トレンチの壁を精査し、古環境再構築に資する土壌資料を層位別に収集することができた。(2)国内においては、現地で入手した各種サンプルの分析を実施した。特に考古学的な遺構、遺物を編年的に比較するのにかかせない年代測定において成果があった。また、遺跡脇をながれるハブール河段丘についての調査成果を解析し、古環境変化に関する知見蓄積につとめた。(3)当遺跡での知見を西アジア新石器時代全体の枠組みでとらえるべく、文献調査や既存資料との比較分析をおこなった。特に成果があがったのは、イラン、コーカサスなど西アジア山麓部における紀元前7千年紀社会の考察である。少なくとも、イランにおいてはいわゆる8.2kaイベントとよばれる寒冷乾燥期に社会が変容していることが確認できた。また、コーカサスについてもその可能性が示唆された。こうした知見は紀元前7千年紀の社会変容が広域な出来事であったこと、気候変化を引き金としているらしいという仮説を支持する。
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オリエント
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Chronique Archeologique en Syrie
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