研究課題
本研究は、紀元前7千年紀における西アジア新石器時代社会の変容過程について論じることを目的としたものである。7千年紀後半から6千年紀初頭にかけて各地で集落の放棄、新天地への拡散など種々の社会変化が生じる。それらが8.2kaイベントと呼ばれる気候悪化を引き金とするいう仮説をたて、北メソポタミアの具体的証拠を検証することを主眼とした。しかしながら、東北シリアのテル・セクル・アル・アヘイマル遺跡で野外調査をおこない論証に必要な考古学的、古環境学的証拠を得ることとしていたが、シリアにおける政情不安のため平成23年度に引き続き24年度も野外調査を実施することはできなかった。そこで、これまでに集めていた既存証拠と周辺地域で得られた資料との比較研究をおこなった。(1)北メソポタミア。テル・セクル・アル・アヘイマルを中心としたそれまでの北メソポタミア新石器時代研究を総括した英文モノグラフを刊行した。同地ではプロト・ハッスーナ文化期を最後に居住が途絶える。その後、先ハラフ文化もしくはハッスーナ文化が拡がるが、この転換が起きるのがちょうど8.2kaに相当する。(2)ザグロス地域との比較。東京大学が1950-60年代に発掘した資料にもとづく分析により、同時期に同じような社会変化がザグロス地方でも起こっている可能性を昨年度までに指摘した。今年度は、イラン人研究者が調査したラハマタバド遺跡の年代測定、石器分析を実施し、このことを確認することができた。(3)南コーカサス地方との比較。アゼルバイジャンやアルメニアの諸遺跡を検討し、農耕牧畜が拡散した時期を調べた。それはほぼ8千年前頃であることが確認できた。変化の時期はメソポタミアとほぼ同時期であるが、やや遅い可能性もある。その違いの意味は今後、慎重に検討すべきであるが、西アジア一帯で広域に起こった文化変化を再確認し得たといえる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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