西アジアの一角、メソポタミアは世界で初めて文明社会が出現した土地である。そうした社会がいかに生まれたのかを明らかにするには、その基盤となった農耕牧畜社会の発展と変容の経緯を探ることが欠かせない。本研究では、初期農耕牧畜社会が大きく変質する土器新石器時代後期の社会変化の実態、メカニズムを野外調査を通じて解明する。特に焦点をあてるのは、紀元前7千年紀における社会変化である。すなわち、農耕牧畜開始当初は比較的均質な社会が展開したものの、その頃、地方文化が勃興し、その後の各地を特徴づけるような文化伝統、社会が形成され始める。この現象がなぜ、どのように生じたのかを気候変化との関連性をシリアにおける野外調査によって調べる。 具体的には、シリア東北部、ハブール平原において、(1)テル・セクル・アル・アヘイマル遺跡の考古学的発掘、および(2)ハブール川一帯の地理学的調査、(3)古環境分析を実施する。そして、(4)その成果を国内研究で統合し、謎とされてきた前7千年紀の文化変化の理由を具体的に説明する。
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