研究課題/領域番号 |
20401031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20183246)
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研究分担者 |
稲葉 穣 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (60201935)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
向井 祐介 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (50452298)
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キーワード | 北魏 / 舎利荘厳具 / 仏教寺院 / 蛍光X線分析 / ガラス / ガンダーラ |
研究概要 |
(1)北魏孝文帝が481年に埋納した河北省定州市定州塔址舎利石函出土の金属器について蛍光X線分析をおこない、中国文の報告をまとめ、中国の学術誌『考古学集刊』に投稿した。多くの成果のなかでも、インドから伝わった中国最古の舎利荘厳具を明らかにしたこと、サーサーン銀貨40枚の基礎データを整理したこと、5世紀の新羅や倭に散見する金製垂飾付耳飾を詳細に図化したこと、銅・亜鉛合金の黄銅製品を発見したこと、正倉院の佐波理の源流となる響銅の碗や匙などを発見したこと、が重要である。また、ガラス器についても別に蛍光X線分析し、西アジアから伝わった技法で制作された中国最古のガラス器であることを明らかにした。(2)一昨年に調査した遼寧省朝陽市思燕寺址出土の瓦・塑像・石刻などの中国文報告をまとめ、中国の学術誌『文物』に投稿した。(3)内蒙古包頭市懐朔鎮寺院址出土の塑像と瓦甎類について包頭市博物館と共同調査を実施し、中国文の報告を学術誌『内蒙古文物考古』に投稿した。重要な成果として、塑像の様式は480年ごろ創建の大同方山思遠寺址や遼寧省朝陽市思燕寺址の例に類似するが、瓦の様式からみると490年代に位置づけられ、孝文帝の行幸と関係があることが推測できた。(4)以上の4寺院址は太和年間に造営された国家級の寺院で、当該期の発掘された寺院址すべての出土文物を調査したことになる。これは中国初期仏教寺院のきわめて重要な考古学データである。(5)北魏の仏教文化はインド・ガンダーラに主要な源流があることは事実だが、調査の過程で、政治的・軍事的に対立していた南朝からも大きな文化的影響があったことに気づいた。そこで今年度は響銅と黄銅の起源を探るため、南京周辺から出土した南朝青銅器の蛍光X線分析を実施した。その結果、5世紀には響銅の食器セットが完成し、6世紀には銅合金の成分が均質化して日本の正倉院佐波理に展開していくことが推測できた。
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