研究課題/領域番号 |
20401038
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研究機関 | (財)中近東文化センター |
研究代表者 |
大村 正子 (財)中近東文化センター, アナトリア考古学研究所, 研究員 (80370196)
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研究分担者 |
大村 幸弘 (財)中近東文化センター, アナトリア考古学研究所, 所長 (10260142)
松村 公仁 (財)中近東文化センター, アナトリア考古学研究所, 研究員 (60370194)
奥村 晃史 広島大学, 文学部, 教授 (10291478)
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キーワード | 考古学 / アナトリア / ヤッスホユック / 都市 / 後期ヒッタイト / アッシリア / 鉄器時代 / 青銅器時代 |
研究概要 |
ヤッスホユックの発掘調査は、『表採調査で堆積が推定された文化を層位学的に明確にするとともに、特に紀元前3千年紀末から1千年紀にかけて、中央アナトリアと東南アナトリアおよびメソポタミアとの交易ルート上に存在したと考えられる一つの都市の構造を明らかにし、古代アナトリアにおける都市国家の形成について検証する』ことを目的とする。2007-2008年の予備調査を基に20092010年に行った発掘調査を継続した2011年度の調査では、特に以下の2点が注目される。 1.第I層(鉄器時代)の下層部において、前期-中期鉄器時代すなわち後期ヒッタイト時代の建築層が出現し始めた。後期ヒッタイトに関係付けられる碑文は中央アナトリア南部で発見されているが、都市遺跡は確認されておらず、クズルウルマックの内側(東側)では、ヒッタイトの本拠地にもかかわらず、後期ヒッタイト時代には碑文さえも発見されていない。ヤッスホユックでは紀元前8世紀後半に年代付けられる鉛製ヒエログリフ文書の小断片の出土と共に、この時代の都市遺構の発見が期待されるところとなった。 2.第II層(青銅器時代)において、そのプラン、規模、保存状態から、中央アナトリアでは前例のない前期-中期青銅器時代の大遺構が出土し、前期・中期青銅器時代における都市国家の成立と展開を考古学的に実証するための新たな知見を生み出しつつある。さらに、土器を基本とする出土資料は、従来の青銅器時代の編年に、特に前期青銅器時代から中期青銅器時代への移行期の問題に再考を求めるものである。 ヤッスホユックの発掘調査は、今後少なくとも30-40年は要するものであるが、その端緒となる本研究において、従来アナトリア考古学において不明とされていた後期ヒッタイトの都市と、前期-中期青銅器時代の都市国家の成立解明について考古学的実証を可能にする糸口が見え始めたことは大きな成果である。
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