研究課題
本研究の目的は、市場経済と結びつきやすい生業形態、つまり農耕や農業を含む生業および観光に着目し、中国雲南省における少数民族地域の変容を明らかにすることである。初年度では、メンバーによる綿密な研究打ち合わせ(3回、いずれも東京で実施)と現地調査を行った。a)西双版納地域、b)迫慶地域と麗江地域、c)徳宏地域の3つのルートを選び、それぞれ約1週間の現地調査を実施した。初年度の調査は、西双版納地域の低地に居住するダイ族、山に居住するギノ族に注目し、聞き取り調査を行った。山地における焼畑では、これまで共同耕作が行われてきたが、家族請負制の導入によって焼畑も各家族に分割経営されるようになり、栽培作物は焼畑耕作から天然ゴムや茶などの商品作物栽培へと変化し、少数民族の暮らしも大きく変化した。一方、迪慶地域では、徳欽という藏族の居住地域で聞き取り調査を行なった。この地域でも、1980年代後半に家族請負制が導入され、耕地やヤクは、家族の成員数に基づき分配された。そして、急速に社会主義市場経済が浸透し、最も重要な生業であるヤクの飼育頭数は、各戸により大きな差異が生じてきた。また、ヤクの乳からチーズやバターを作り、最寄りの市場で販売し、重要な現金収入を得ている。一方の麗江郊外での調査では、都市近郊の地の利を生かしたツーリズムが展開されている。農家レストラン(農家楽)・民宿・乗馬場経営・バードウォッチングなどは伝統的な農業経営に代わり、農村経済の重要部門になりつつあることを明らかにした。雲南省徳宏地域では、古い町並みの保存と観光開発の例として、和順郷の取り組みを調べ、旅館経営者に聞き取り調査を実施した。また、芒市郊外の徳昴族の村において聞き取り調査を行い、交通条件の変化に伴う経営の変化、つまり焼畑から換金作物への経営転換の過程や理由を調べた。以上の結果は、2009年10月に琉球大学で開かれる日本地理学会において発表する予定である。
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立教大学観光学部紀要 10
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立教大学観光研究所編『暮らしと観光-地域からの視座-』 なし
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