本研究は、アジアにおける深刻な環境汚染のうち、各地で顕在化している地下水砒素汚染を対象として、砒素汚染を、単に水資源の環境問題としてのみではなく、汚染地住民の貧困に密接に関係する社会的問題として捉え直すことを目的とする。政治経済体制の違うアジアの砒素汚染地の状況を比較しつつ、生活インフラや経済資源が欠乏している途上国の農村部という社会的環境の中で、貧困が住民の健康状態に影響し、同時に、砒素汚染による健康被害が、貧困を加速している過程を、政治生態学の枠組みで、汚染地の住民から直接聞き取りを行う民族誌的調査によって具体的な事例で明らかにしようとするものである。
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