本研究はエチオピアにおいて、中央政府が地域開発を国家支配のためにいかなる形で利用しようとしているのか、そしてそれが地域住民にどのような影響を与えているのかを、南部諸民族州およびオロミア州の開発プロジェクトを事例として、実証的に明らかにすることを目的とする。今日のエチオピアの地方で行なわれている開発プロジェクトには、政府とプロジェクト間に複雑な依存/収奪の関係がみられる。地域開発には莫大な資金が投入され、関与する者に経済的利潤をもたらし、クライアント集団を形成することを可能にするが、他方で自由主義経済のもと開発の主体は多様化し、政権側と開発側、さらに開発の対象となる地域の住民の関係は複雑化し、そこに依存/収奪の関係が生ずるのである。本研究はこのような、エチオピアにおける国家権力・開発エージェント・地域住民間の複雑な交渉過程を明らかにし、そこからグローバル経済下の第三世界における開発と国家権力間の関係のモデルを構築することをめざす。
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