これまでの三年間の研究期間にわたって蓄えられた各研究メンバーの海外調査研究のデータを比較検討するなかで、「駆け引き」というミクロな場面における相互交渉をテーマとして、人間と動物の関係をめぐる民族誌を書いて、比較検討するという、一つの大きな方向性を見出した。その後、メンバーが、各自、原稿用紙80枚程度の論考を執筆する準備を進めることにより、科研費研究期間の最終年度内に、本科研の研究成果報告集を出版刊行することを目指した。 2011年5月には、研究代表者と連携研究者に加えて、研究協力者にも参加してもらって、研究集会を開催し(於:町田市、桜美林大学)、執筆中の草稿の読み合わせと相互検討を行った。2011年6月12日(日)には、日本文化人類学会第45回研究大会(於:法政大学市ヶ谷)において、連携研究者・田川玄が代表者となって、「人間と動物の駆け引き」と題する分科会を組織して、本科研のテーマに関する議論と意見交換を行った。 その後、本づくりの取りまとめの作業を行い、2011年9月30日付けで、『人と動物、駆け引きの民族誌』を出版刊行した(奥野克巳編著、はる書房)。本年度の科研費の予算の大半は、研究集会における出張旅費および出版印刷費用に充てられた。また、研究代表者の奥野は、人間と動物の関わりについての比較研究を行うため、2012年2月に、中国・内蒙古自治区に出張し、牧畜民モンゴル人の人畜関係と宗教実践に関して、短期で実地調査を行った。
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