本研究は、新生殖技術(先端的生殖医療)の実用化に伴って近年急激に進行しつつある親子・家族・婚姻関係等の再編の実態を、生殖技術先進国であるアメリカやフィンランド、デンマーク及び韓国等における不妊治療従事者や不妊治療患者へのインタビュー等を通して明らかにすることを主要な目的としている。また、そうした再編の実態を視野に入れ、親子・家族・結婚に関する新たな社会・文化理論を構築し、提示することも試みる。研究最終年度の平成22(2010)年度は、研究代表者と連携研究者、研究協力者がそれぞれに割り振られた調査対象国で補充調査を実施するとともに、研究成果をまとめ、理論的な検討に取り組んだ。すなわち、上杉富之は、今日的な社会的・文化的諸現象を的確に対象化し分析する枠組みとして、グローバリゼーションとローカリゼーションが同時かつ相互に影響を及ぼしながら進行すると考えるグローカリゼーションに基づく「グローカル研究」を構想し、生殖補助医療の進展に伴って進行する親子・婚姻・家族関係の再編の問題を「グローカル研究」の一環として調査研究する可能性を検討した。石原理は、スウェーデンの国際養子縁組センターを再訪するとともにアイルランドのダブリン大学を訪問し、不妊治療の代替策としての国際養子の実態に関する補充調査を実施した。一方、出口顯はスウェーデンのルンド大学、カロリンスカ研究所、国際養子縁組センターを再訪するとともに、ユニヴァーシティー・カレッジ並びにアイルランド生殖医療センターを訪問し、国際養子の実態に関する調査を行った。一方、研究協力者の中村人重は、韓国の子どもが北欧諸国に国際養子として引き取られていることにかんがみ、スウェーデンの国際養子縁組センターやデンマークのダンアドプト・デンマーク国際児童福祉協会等を訪問し、韓国人国際養子に関する実態調査を行った。
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